「断ち落とし」ってなんだろう?
みなさんは、「断ち落とし」という言葉を聞いたことがありますか?
出版・印刷業界ではおなじみの用語で、「断裁時に仕上がり位置からズレが生じた場合の予備領域」のことをこう呼びます。
例えば、このような全面写真のページがあるとします。
印刷や断裁にズレがなければ問題ないのですが、ズレが発生してしまうと、こんなことになってしまいます。
とてもカッコ悪いですよね?
このように、写真やイラスト、ページ全体の背景色などに、意図しない余白(紙の色)が見えないようにするための工夫が「断ち落とし」というわけです。
どうするのかというと、実際に断裁する仕上がり位置の外側に「ここまであれば大丈夫!」というラインを設けていて、その線まで写真や色柄を配置するのです。そうすると、断裁が多少あばれたとしても余分な隙間ができず、キレイに仕上げることができます。
この目安となるのが、「トンボ」です。印刷会社からあがってきた校正紙で見たことがある方も多いのではないでしょうか。仕上がり位置を示すものを「内トンボ」、写真や色柄を伸ばしておく位置を示すものを「外トンボ」と呼びます。この幅は通常は3mm程度ですが、製本の仕方によってはもっと広い場合もあります。
では、校正の際には、どの辺に注意したらいいのでしょうか。
まず、仕上がり位置の外まで写真や色柄が配置されているかどうかの確認が必要となります。「内トンボ」を結んだラインに定規をあて、鉛筆等で線を引いてみるとチェックがしやすくなります。
また、外側に断裁がズレてしまうということは、もちろん内側にズレてしまうということもあり得ます。文字や写真の重要な部分(人物の顔など)のように、断裁されてしまうと困る要素については、こちらも仕上がり線より3mm以上内側の「印刷安全領域」にレイアウトするというのがデザインの基本ルールです。
ちなみに、「断ち落とし(裁ち落とし)」「断ち切り(裁ち切り)」「塗り足し」「ドブ」と、企業や業界により呼び方はさまざまで、意味するところも微妙に異なっていたりします。
「断ち落とし」や「断ち切り」「塗り足し」というのはそのままですが、「ドブ」というのはちょっと面白いですよね?由来ははっきりとはわかりませんが、トンボで断裁された余白部分は捨ててしまうことから、不要なものを流してしまう道路の排水溝をイメージして、「ドブ(溝)」というようになった、という説もあります。
印刷・製本業界には、独特のルールから生まれた不思議なルールや業界用語がたくさんあります。色々調べてみるのも楽しいですよ。