校正者の仕事がなくなる? 第3回:「情報流通量の増大と信頼性」

みなさんこんにちは、文字工房燦光の下重一正です。
前回、第2回の記事「校正の領域」では、企業、および社会活動と校正の需要について考察し、校正者の未来を考えてみました。
第3回「情報流通量の増大と信頼性」では、「伸張し続ける情報量と校正の需要」について考えてみます。
前回の記事では、校正が対象とするのは「文字」ではなく「情報そのもの」であると定義しましたが、日本でやり取りされている情報トラフィックはどのような推移となるでしょうか。
明示するまでもないかもしれませんが、日本国内の通信量は総務省の集計以降増加の一途をたどり、直近の年度においては二桁パーセントの伸びを示しています。
(出典:「総務省(2024)「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果」)
では、その情報量の増大がそのまま校正の需要増加につながるかというと、答えは簡単ではありません。
みなさんはネットニュースなどを読むとき、その誤字の多さに驚くことはないでしょうか。
インターネット上の情報の誤りについて、「間違っていたとしてもすぐに情報を修正できるため、校正の必要性は低い」とかつては考えられてきました。
ただ、近年では、「インターネットで公開された情報は、半永久的に残り続けるため、より一層の配慮が必要」という考えが広がっています。
実際に、インターネットの黎明期においては、ネットを介した情報発信は匿名性が高く、情報発信する側の責任について問われることは多くありませんでした。
しかし、SNSなどの拡大によって情報は瞬く間に拡散され、元の情報が修正されたとしても、一度SNSで拡散されてしまった情報はインターネット上に残り続けるため、情報の在り方そのものが変化しています。
つまり、情報発信者の負う責任が、以前に比べ格段に大きくなってきたといえます。
《第4回「校正の需要拡大と課題」につづく》
「校正者の仕事がなくなる?」(全6回)
第1回:校正者の仕事がなくなる? 「校正者の仕事がなくなる?」
第2回:校正者の仕事がなくなる? 「校正の領域」
第3回:校正者の仕事がなくなる? 「情報流通量の増大と信頼性」
第4回:校正者の仕事がなくなる? 「校正の需要拡大と課題」
第5回:校正者の仕事がなくなる? 「校正とAI」
第6回:校正者の仕事がなくなる? 「文字校正から情報校正へ」